再稼働、割れる賛否=「拙速」「地域振興」-原発立地県の有権者【14衆院選】
東京電力福島第1原発事故の収束にめどが立たない中、各地の原発で再稼働に向けた手続きが進んでいる。昨年9月から続く「原発ゼロ」で国民生活に大きな混乱は生じていないが、火力発電燃料の輸入コスト増で電気料金の値上げも相次ぐ。衆院選の投票日を前に、原発立地県の住民は賛否の意思表示に頭を悩ませる。 来春にも再稼働第1号となる見通しの九州電力川内原発がある鹿児島県薩摩川内市。市内の主婦(75)は「原発は絶対反対。福島であんなことがあったので怖い。再稼働はしてほしくない」と話す。サービス業の男性(57)も「国は原発を軽く見過ぎている。最終処分場がないのに再稼働をするのはおかしい」と指摘した。 一方、男性公務員(54)は「原発が止まり地域経済が冷え込んだ印象がある。再稼働は賛成」と話し、パート社員の女性(48)も「どちらかといえば賛成」。ただ、福祉施設で働く女性(49)は「安全なエネルギーが供給できるなら原発はない方がいい」、2歳の子を持つ女性会社員(23)も「代わるものがあるなら移行してほしい。子どもが大きくなっても原発はあるので不安」と話す。 未曽有の大事故から間もなく4年を迎える福島県では、今も2万5000人が仮設住宅で避難生活を続ける。いわき市の無職佐藤勇児さん(84)は「原発をどうするか国民的合意がない。もっと慎重に進めるべきだ」と批判。同市の無職女性(73)は「仮設の現状があるのに再稼働の話をされても納得できない」と訴えた。 川内原発に次いで再稼働に向けた審査が進む関西電力高浜原発3、4号機など、全国最多の14基の原発が集中する福井県。運転停止の長期化で地域経済や雇用に影響が出ており、早期の再稼働を求める住民も多い。 今年5月、福井地裁が大飯原発の運転差し止めを命じた訴訟で原告団代表を務める中嶌哲演さん(72)は「地元は目先のことを考えざるを得ないが、原発に依存しない方がいいと思う人も多いはず。代替産業による地域振興など将来の展望について、候補者は積極的に訴えるべきだ」と話した。(2014/12/09-14:19)時事ドットコム