「広島は原爆のモルモットにされた」。スペイン紙報じる

 1945年8月6日に広島に原爆が投下され、3日後の9日に長崎にも投下された。それから70年が経過した今、世界にはおよそ16,000発の核爆弾が用意されている。当時の広島の人口は42万人、長崎は24万人。前者の被爆犠牲者は12万2千人、その後5年間で20万人が被爆の影響で亡くなり、後者は被爆犠牲者7万4千人、5年間で14万人が亡くなったとされている。

 スペイン代表紙のひとつ『El Mundo』のワシントン支局のパブロ・パルド記者が広島の原爆記念日に寄せた8月6日付記事がある。その中で彼は<投下の日の死者が8万人、それから1年以内に9万-15万人が亡くなっているというのが信頼出来る犠牲者の数だ>と伝えた。また<犠牲者の5分の1は太陽の帝国に連れて来られて軍需工場などで働かされていた韓国人だ>とも記述した。それと同比で、<1945年3月9日の東京空襲で10万人が犠牲になった>ことにも触れ、それまで空襲を受けたことのなかった<広島の住民は原爆投下でまさにモルモットにされたのである>と言及した。

 更に同紙は、<世界は今日、原爆が意味することを経験しているにも拘らず、1945年から2045回の核実験が行なわれている。その中で最大のものはソ連が北極海のノヴァセゼムリャ島の上空から行なったツァーリ・ボンバである。その破壊威力は広島に投下されたものの1500倍である>と報じた。更に<現在、米国とロシアはそれぞれいつでも発射出来る体制にある核兵器が1800発あるという。米国のオハイオ級潜水艦は200発の水素爆弾を登載しており、各1発は広島へ投下された原爆の数百倍の威力がある>ことも指摘した。

 さらに、<オバマ大統領は米国の核防衛プログラムの近代化へのプランを発表した。それは4万人の雇用に繋がり、この先30年で9,000億ユーロ(121兆5,000億円)の費用が費やされる>とも伝えた。

 また南米コロンビアの代表紙『El Tiempo』にフランスのIstitute for Advanced Study(IAS)のディエゴ・ソレール博士が同じく原爆70周年に因み寄稿している。その内容の一部を以下に紹介する。

<12平方kmのエリアで7万人が犠牲者となり、7万人が負傷した。その後も数十万人が放射能の影響を受けた><この爆弾はマンハッタン計画によるものだ。この計画には米国、英国、カナダの研究所から13万人が動員された。非常に優れた物理学者によって研究開発が進められた>しかし、<この破壊兵器が及ぼす被害効果については誰も想像出来なかった。広島に投下された原爆によって、創造力と破壊力の間の融合点を見い出すことになった><原爆がもたらした被害を見た時の不快と痛みはマンハッタン計画に参加したリチャード・ファインマン氏が語ったことと通じるものがある。即ち、彼は建設中の橋や新しい道路を見て、「なぜつくらねばならないのか?どうせ無駄になるのに」と感じさせられた>という。しかし、<自然への好奇心が原爆をつくる為の原理を教えてくれた。その好奇心がその後もファインマンに生きることを指導し、20世紀の最も優れた物理学者となった>とソレール博士は同紙の中で述べている。

 また英国のBBCのスペイン語版『BBC Mundo』でも8月6日付で広島に投下された原爆のことをアルトゥロ・ワラス記者が取り上げた。その中で<兵隊と一般市民の区別なく広島に原爆を投下したことは戦争犯罪だと考えている者が多くいる>と指摘した。コーネル大学のマーク・セルデン教授はワラス氏のインタビューに答えて<「東京を含め3都市への空襲で50万人以上が犠牲者になっていたが、日本はまだ降伏する意思はなかった。天皇陛下を守ることが念頭にあったからだ」>と述べ、<「それでも降伏への道は必死に摸索していた。その為に日本はソ連に仲介を頼むことも考えていた」>と語った。またカリフォリア大学の長谷川毅教授は<「正にロシアが介入する可能性があることに及んで、トルーマンは原爆を使って終結させることを決意した」>と同氏のインタビューに答えた。そして<「原爆を使った理由はソ連が参戦する前に日本のリーダーに降伏させる為であった」>とも説明した。

 またセルデン氏と長谷川氏が同意しているのは、原爆を投下した理由は<米国が開発した原爆を戦争中に使用しないというのは非常に難しかったからだ>と同紙は伝えた。

 更に、長谷川氏は<「道義的ためらいは原爆の魅力の前に征服された。だから以前はB29から300発の爆弾を投下したが、それが1つの爆弾で済むという段階の差が投下の決定を相対的に容易にさせた」>とインタビューで指摘した。

 最近まで注目を集めたイランとの核協議においてドイツ以外の5カ国(米英仏露中)は核保有国である。核を持っている国がイランに対し核をもってはいけないと規制する矛盾。この5カ国にもそして他の核保有国にも地球全体で核を破棄するように義務づける必要がある。それは現段階では理想論ではあるが、現状の国際情勢では核兵器が存在する限り何れ核戦争が起きる可能性は充分にある。

 原爆投下後70年となる今、広島に生まれ、原爆によって殺された親族を持つ筆者は、その「理想」に向けて世界が動くことを切に願う。

<取材・文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなしていた。

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