新国立競技場 森喜朗会長「生カキがドロッとたれたみたい」キールアーチ酷評
2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相は17日のBS朝日の番組収録で、新国立競技場の建設計画について「見直した方がいい」と述べ、計画見直しを容認した。発言の詳細は以下の通り。 ――新国立競技場の建設費が当初の1300億円から総工費2520億円に膨らんだ 「私も分からない。ただね、国が造ろうと民間が造ろうと相手はゼネコンだ。その企業にとっては命がけだ。そこで折り合いがつかないから」 「一生懸命、(総工費を)下げようと思ってらっしゃると思うが、交渉しているのは、JSC(日本スポーツ振興センター)は文科省の下部機構、こんな大きな事業をするような部署はない。専門家はいない。もともと学校給食とか交通安全とか。toto(スポーツ振興くじ)を扱うようになって、お金が入るようになった。1000億円以上売り上げがある。文科省はスーパーゼネコンを相手にするようなところはない。業者と交渉することに、かなり無理があったと思う。こういうのはわからないが、国土交通省は何千億の仕事をやるから、そういう契約は手慣れている」 ――責任体制があいまいだ 「責任体制は文部科学省だ。文科相だ。この問題に手をつけて最初の予算をつけたのは、民主党政権のときに、中川正春(元文部科学相)さんだ。そのあとは平野(博文)さんか。採用したのは、田中真紀子さんだから。そういう時代に最初のスタートをしたことは案外知られていない」 ――いい加減だった 「いい加減とはいわないが、僕らも最初はわからない」 ――五輪招致より前にデザインが決まったことを知らない人もいる 「ラグビー協会の会長もやっていたから、五輪のその前にワールドカップが決まった。横浜のスタジアムでやるというファイルを出した。国立競技場は(1964年の)東京五輪のときにつくられた。老朽化していて免震も耐震も行われていない。危険な状況だから、五輪があろうとなかろうと建て替えないといけない時期がきていた」 ――発注はどこがするのか 「直接交渉はJSCでしょうね」 ――JSCには専門家がいないと 「そんな大きな事業をやるような経験もない」 ――文科省がしっかりしないといけないのか 「一生懸命やっていたけれども、最終的にはもてあましたんじゃないかと思うね」 ――何で2520億になったのか 「立候補ファイルというのがあって、就任してチェックしてみた。東北の大震災があってものすごく物価、人件費が上がっている。トータルで2000億円程度圧縮した。東京都だけで3000億。東京都がオリンピックのために用意する施設は節約してもトータルして3000億円だ」 「組織委員会というのは仮設の施設をつくる。五輪のためにつくって終わったらぶっ壊しちゃう。セキュリティーの問題から、5000億円を超える。東京都で3000億円、われわれの団体は民間だから、それでも5000、6000億円」 ――もともと1300億円といっていたものが膨れた 「誰がそういうことをしたのか私も分かりません」 ――責任者は誰なのか 「それは文科省だ。施設の部長とかはいるしねえ」 ――デザインは見直さない方がいいのか 「見直しはした方がいいでしょう。僕はもともとあのスタイルは嫌でしたからね」 ――キールアーチは賛成じゃない? 「キールアーチというより、全体のデザインが僕はね。応募してコンペをやって40くらい出ていたでしょ。見ていたが、1番のこれをみたときに、おやっと思ったですがね。生カキをドロッとたれたみたいでね」 ――こういうものには賛成じゃなかったのか 「キールアーチかどうかは別としても、このデザインは嫌だなあと正直、思った。やっぱ(東京には)合わないんじゃないでしょうか」 ――工期が間に合わないといわれている 「ラグビーのために急がないといけないとか。嫌ならやらなくていいんですよ、私は。私はラグビーワールドカップを勝ち取ってきた立場だが、このことと国立競技場の建て替えは違う。なかなか重い腰を文科省も財務省もあげない」 ――財源が確保できているのは620億。1900億円は未定だ 「本当は都がこれだけの金を出している。組織委員会も出している。国はたったの2520億円。もっと出さないといけない」 ――建設費が高いと思わないのか 「高いとか安いということは何を基準にするんですかということです。オリンピックだけでモノをいえば、組織委員会よりも、都の施設よりもはるかに安いですよということになる。ただ、長い懸案だった国立競技場を建て替えるんだというこの事業に対して、国がどうするのかということを考えたら、国も都の金をあてにしちゃいかんのじゃないですか。本当は国がきちんとこれだけのことをやって、都も恩恵があることだから、賢明な舛添要一(都知事)さんもそれならとなると思う」 ――下村博文文科相が500億円の負担を都に求めた 「文部大臣の話のもっていき方が悪いんでね。下村さんは猪瀬直樹(前知事)さんともその交渉している。舛添さんは就任したばかりだから、国の施設に都のお金を入れていいのかなと」 ――これまでの夏の五輪のメーンスタジアムは高くない 「テレビ朝日の朝の番組はこの表をよく使う。ロンドンのものはそんなに本格的なものではなかった。終わってサッカー場になっている。シドニーも簡単なもの。比較をするのは全く間違い。これから50年、立派に使える施設にしたいということでやっている」 「書かれた方たちは関係者の話はちゃんと聞かれたのかな。日本のメディアの悪いところで、世論を騒がせる。自分の足で、耳で書かれる論説の方は、直接聞かれるのか」 ――(審査委員会で委員長を務めた建築家の)安藤忠雄さんが記者会見した 「知らないとは思わないけどね。自分が決めた。あとは知らないという方なのかなと。もう1つ不幸なのは、建築家グループがある意味ではアンチ安藤みたいなところがある。全く無関心だったとは思わないな」 ――安倍晋三首相が見直しをするといっている。デザインの見直し、工期の見直しもするのか 「競技場が間に合わなければ、他の競技場でやるんじゃないですか。ラグビーをターゲットにするのは非常に不愉快だ。ただ、ラグビーもオリンピックも閣僚会議でちゃんと認めている」 ――ラグビーの試合ができなくても仕方ない? 「できないものを、ないものねだりしてもしょうがない。安倍さんがどうおっしゃるのか知らないが、両大臣を呼んで、文科相、五輪相を呼んで、遠藤利明五輪相がその調整をしたらいいと思う。ほとんどみんな透明度はないんじゃないでしょうか。不正がなければいいんですよ。不正があってはいけないし、きちんとした人がいればいい」 ――きちんとした人がいたのか 「いたと思う。大臣は結果の報告を聞くだけ。透明にして、みんなに分かるようにしてやれというのは難しいと思う。僕と安倍さんで決めるものではない。いいものをしてくださいよと。遠藤五輪相がしっかり、従来の経緯からみて遠藤五輪相がいいと思う」
産経新聞 7月17日(金)17時59分配信