「民主主義って何なんだ」 強行採決に抗議、全国で
この道はどこへ行き着くのか。ヤジと怒号の渦。しかし与党側からも高揚感の見えぬまま、安全保障関連法案が15日、衆院特別委員会で可決された。「民主主義って何なんだ」。抗議の意思を示そうと、人波が国会前へ向かい、その輪は各地に広がった。
「9条守れ」「安倍政権の暴走とめろ」。 衆院特別委員会での採決から6時間余り経った午後6時半、日中の暑さが残る国会正門前でこの日4回目の集会が始まった。仕事を終えたサラリーマンや親子連れなど、様々な世代の約2万5千人(主催者発表)が数百メートルにわたって歩道を埋め、声を上げた。 訴えは午後11時半まで続いた。雨が降るなか、傘もささずにいた京都市の大学院生藤井美保さん(24)は「きょう行かないと後悔すると思って来た。反対の声を国会に届けたかったから」と話した。集会は3度目という大学院生の女性(22)は「きょうの雰囲気はこれまでと全然違う。参加者も増えた」。 東京都大田区の警備員半沢英雄さん(68)は、40代の娘夫婦と小学生の孫の3世代でやってきた。デモにそろって参加するのは初めて。抗議する人たちの姿を、子や孫たちとともに目に焼き付けたいと、連絡を取り合って駆けつけた。「今まで生きてきた中で、政治が一番危うい。何か行動しなくてはと思った」 集会は、国会周辺で五月雨式に続いた。午後7時半からは学生団体「SEALDs(シールズ)」が開催。授業後、友人2人を誘って来た都内の大学3年生木村茜(あかね)さん(21)は、「強行採決反対」と書かれたプラカードを掲げ、声を上げ続けた。「大学でも、安倍政権のやり方はおかしいと思っている友人は多い。民意を無視しているようにしか見えない」 今回の審議を見ていて、次の選挙には必ず行こうと決めた。「若者だって、政治に無関心ではないというメッセージを伝えたい」と話した。 正門そばの演台では、学者や作家、若者、野党幹部らが代わる代わるマイクを握った。13日の中央公聴会で意見を述べた山口二郎・法政大教授(政治学)は「(公聴会での意見を)その後の審議にどう反映させたのか。政治が劣化し、民主主義が脅かされる。危機感を持って闘い抜く」と訴えた。 抗議の動きは、各地でも起きた。 広島市中区の原爆ドーム前。午後2時ごろから、市民ら約130人が「抗議! 戦争法の強行採決を許さん!」という横断幕を掲げて座り込んだ。祖父母が被爆者という会社員石本直(なお)さん(28)=広島市東区=は「戦争は過去のものだと思っていたが、最近は状況が変わってきて怖い」と話した。 安倍晋三首相の地元、山口県下関市の首相の事務所前では、市民ら約40人が抗議した。神父の林尚志さん(80)は「安倍首相は法案の必要性を国民に説明しきっていない。強行採決はやり方が未熟だ」と批判した。 熊本市中央区の辛島公園での座り込みに、平村和子さん(44)は3歳の長女を連れ、勇気を出し、参加した。「SNSで法案のことを拡散したり、知人に話したり、できることをしていきたい」。26日は東京・渋谷で開かれるママの会のデモに参加するつもりだという。朝日新聞デジタル 7月15日(水)23時15分配信