原発再稼働1号は高浜か 「合格証」きょう確定、川内は遅れ
関西電力高浜原発3、4号機(福井県)が九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)を抜き、再稼働一番乗りを果たす観測が浮上していることが11日、政府関係者への取材で分かった。原子力規制委員会は高浜について事実上の合格証となる「審査書」を12日に確定させる。これで両原発は審査の上で並んだ形となり、政府はいずれが先に稼働しても対応できるよう両にらみで準備に着手している。 川内原発は昨年9月、施設の安全対策や方針を判断する「原子炉設置変更許可」の審査でいち早く合格を果たしたが、機器の設計図を確認する工事計画など認可審査の書類の作成に手間取っている。書類は2基で4万ページを超え、九電は3月末までの提出を目指す。 これに対し、12日に合格する見込みの高浜は、すでに認可審査の書類の大半を今月2日に提出している。書類の量は、川内の倍となる約8万2千ページで、記載の充実度がうかがえる。 特に関電は九電に比べて原子力部門の人材が豊富だ。九電の2原発6基に対し、関電は3原発11基を保有しており、関電関係者は「他の原発から流動的に人員を確保できる」といい、認可審査後に行われる検査でも有利に立つ。 政府関係者によると、高浜周辺の市町に、原発事故に備えた避難計画の策定を支援するため、内閣府の職員ら7人を派遣するなど、すでに再稼働への布石を打っているという。 一方で遅れが響いている九電は今月から、原子力以外の社員による100人程度の審査の専従チームを福岡に設け、早期の再稼働に力を尽くしている。 原子力規制庁幹部によると、川内を昨年3月、許可審査を集中的に行う「優先原発」に選んだが、その後の認可審査では、川内を優先せず、高浜も並行して審査を行う方針だという。 規制委の田中俊一委員長も「九電の対応の遅れを懸念している。抜きつ抜かれつのレースは面白いかもしれないが、そういう風に考えていない。どうなるかは審査が残っているので、それ次第だと思う」と話し、必ずしも川内が全審査終了の一番手にならないとの見方を示した。 ただ、川内が有利な点は、再稼働に向けた「地元の同意」だ。昨年10、11月に立地自治体の薩摩川内市と鹿児島県が同意を表明し、大きなハードルをクリアした。 高浜では防災指針の目安となる半径30キロ圏に京都府や滋賀県も含まれるため、地元の範囲をめぐって争いがあり、同意がスムーズに得られるかは不透明だ。 いずれにしても原発が再稼働するのは夏以降となり、年間で最も電力需要が高まる夏に間に合うかがカギとなる。(原子力取材班)産経新聞 2月12日(木)7時55分配信