<衆院選>洋上投票、蚊帳の外 漁業者憤り
12月2日公示の衆院選で、遠洋漁船などの乗組員が船からファクスで投票する「洋上投票」ができず、蚊帳の外に置かれている。抜き打ちの解散で、ほとんどの船が事前に手続きできないまま出航したためだ。同じく短期決戦だった2012年の衆院選でも東北の投票実績はゼロ。気仙沼市の漁船基地からは「船員の選挙権がないがしろにされている」と疑問の声が上がる。
洋上投票は、船長が事前に選管から乗組員の投票用送信用紙を受け取り、公示後に船内のファクスから投票する不在者投票の一種。 解散から公示までわずか11日間という異例の超短期決戦となり、遠洋マグロ漁船4隻が操業中の気仙沼市の漁業会社は「唐突だったので乗組員の投票用紙が準備できていない」と打ち明ける。 28日、洋上投票用のファクス装置を設置した気仙沼市選管の担当者は「急きょの申し込みは難しいだろう」とみる。気仙沼市を含め宮城県内沿岸8市町の選管への用紙請求は今のところ1件もない。 気仙沼漁港を母港とする船員有権者は300人以上いるとみられる。気仙沼市選管への洋上投票は、09年衆院選は46件の請求があったが、突然の解散だった12年はゼロだった。 全国も同じ傾向で、制度が始まった00年衆院選は全国で762人が投票したが、12年は113人に激減した。 洋上投票は気仙沼市内の漁業関係者が熱心に運動し、公選法改正に導いた経緯がある。気仙沼遠洋漁業協同組合(気仙沼市)の三浦一彦専務理事は「事前の手続きが必要なため突然の解散には対応できない。結果的に船員の選挙権、参政権が守られていない」と指摘する。 漁業関係者の間からは「インターネット投票など臨機応変に対応できる仕組みにすればいいのではないか」との声が上がる。しかし、総務省選挙部は「洋上投票は例外的に認めている制度。仕組みの見直しは本人確認などの観点から現時点では難しい」と話す。河北新報 11月29日(土)9時34分配信