「選挙やってる場合か」=「政権の都合」に憤り-被災地、復興遅れ懸念
「選挙などやっている場合なのか」。前回から2年足らずで多額の費用を使って行われる総選挙。東日本大震災の被災者たちは、復興がさらに遅れることへのいら立ちを募らせた。
津波被害を受けた岩手県釜石市花露辺地区の自治会長下村恵寿さん(65)は「なぜ今解散するのか」と憤る。「安倍首相は『復興なくして日本の再生なし』と言うが、復興を重視しているとはとても思えない。法案を通すなどやるべきことがたくさんある。自分の身を守るための選挙だ」と批判した。 同県大船渡市でプレハブの仮設菓子店を営む高橋照直さん(44)は「また復興が遅れるのでは」と不安そう。新たに工場を建てる予定だが、最近は客足が遠のき、「大企業ばかりでなく零細企業への支援にもっと力を入れてほしい」と訴えた。 東京電力福島第1原発から20キロ圏内で初めて避難指示が解除された福島県田村市都路地区。農業坪井久夫さん(64)は「復興を急がなければならない中、意味のない解散。自分らだけの都合で被災地を振り回すのは許せない」と憤慨する。昨年からコメ作りを再開したが、今年は米価が大幅に下落し「死活問題」に直面する。「政治家は被災地が抱えている課題に向き合うべきだ」と語った。 同県浪江町から南相馬市に避難し、漁業再開に向け準備している漁師高野武さん(64)も「除染などもっとやるべきことはたくさんある」と復興の停滞を懸念。総選挙に投入される600億円程度の国費について、「そのお金を復興支援に回してもらいたい」と話した。 宮城県気仙沼市の仮設住宅で暮らす女性(70)は「東京五輪などで工事も遅れているのに、選挙をやって復興はもっと遅れるんじゃないか」とやるせない表情を浮かべた。消費税再引き上げは先送りされたものの、「首相は金持ちを優遇してばかり。被災地にたくさんいる私たち低所得者層のことをもっと考えて」と注文を付けた。(2014/11/18-19:49)時事ドットコム