玄海原発1号機、廃炉へ 九電「経済性担保できず」
九州電力が、来年10月に運転開始から40年を迎える玄海原発1号機(佐賀県玄海町、出力55万9千キロワット)の再稼働を断念し、廃炉にする方針であることが29日、明らかになった。原発の法定運転期間は40年とされ、最大20年の延長運転が可能だが、玄海1号機の延長運転には追加の安全対策工事などに多額の費用がかかる見込みで、費用対効果を十分に得られない可能性が高いという。国の廃炉促進策などを見極めた上で最終判断する。 ※電力9社、原発解体費4割不足 東日本大震災以降、福島第1原発以外で原発の廃炉方針が表面化するのは初めて。玄海1号機を含め、運転開始から40年前後となる国内の原発7基については、経済産業省が廃炉にするかの判断を急ぐよう電気事業連合会に要請しており、九電の判断は他の電力会社にも影響を与えそうだ。 7基については制度上、運転延長を目指す場合は電力会社が設備の劣化状況などを確かめる「特別点検」を実施し、来年4~7月に原子力規制委員会に延長申請しなければならない。また、申請から1年後までに原発の新規制基準に適合することも条件となる。 九電はこれまで玄海1号機の運転延長の可能性を探る検討を進めてきたが、新基準に適合するには燃えやすいケーブルの難燃化対応など安全対策に多額の経費がかかると試算。再稼働すれば年数百億円規模の収支改善効果が見込めるが、1年余りという限られた期間で原子力規制委員会による適合性審査を終えるかは不透明。「現状では運転延長を目指しても経済性が担保できない」(九電幹部)という。 原発の廃炉をめぐっては、電力会社が廃炉を決断した場合に計上しなければならない多額の特別損失が障壁の一つになっていたが、経済産業省の原子力小委員会が会計制度の改正に向けた検討を急ぐ方針を示している。 一方、原子力規制委員会は29日、電力会社のトップに原発の安全性向上に対する心構えを確認するため、九州電力の瓜生道明社長と東京都内で意見交換した。規制委の田中俊一委員長は、使用済み核燃料の貯蔵について、既存のプール式ではなく、欧米で主流になっている乾式貯蔵方式の導入を要請。瓜生社長は「廃炉となった時の受け入れもあるので、緊急避難的に燃料プールを増やしてほしい」と述べ、玄海1号機の廃炉を見据え、まずは既存の燃料プールの拡張が必要との認識を示した。qBiz 西日本新聞経済電子版 10月30日(木)