汚染水タンク:急場の中古品そのまま 東電、国会で触れず
東京電力福島第1原発に設置された組み立て式の汚染水タンクに中古品が使われていたことが明らかになった。タンクからの汚染水漏えい問題を審議した昨年9月の衆院経済産業委員会で、東電の広瀬直己社長は「組み立て式は接合部から漏れる可能性はあるものの施工が速いので(メーカーに発注して)造った」と強調。だが、新規製造の前にまず中古品を導入したことについては一切言及していなかった。
中古品を納品したメーカー関係者によると、同社は東電から汚染水をためるタンクの発注を受け、「当初はリース用の(中古)タンクを手元にあるだけ納めた。20〜30基。それだけでは足りないから新しいものを造って入れた」という。
同社のタンクはそもそも、建設現場で泥水などを一時的に蓄えるリース用で、組み立てる手間はそれほどかからないという。1基あたり数十回利用されるが、泥水を長期間貯蔵し続けることは基本的になく、関係者は「長く使って漏れたとしても、泥水なら困るようなものではない。今回は(中に入れる)ものがものだから(問題となった)」と話した。
組み立て式タンクからの汚染水漏えいは昨年8月、高濃度の放射性物質を含んだ汚染水約300トンが漏れたとして大きな問題となり、9月27日に衆院経済産業委員会で閉会中審査が行われ、広瀬社長が参考人として答弁した。広瀬社長は、組み立て式のタンクが溶接型に比べて漏えいの可能性が高いことを認めつつ「組み立て式は圧倒的に施工のスピードが速いので、まず優先して造った」「急いで造ったのは事実」などと強調した。しかし、組み立て式の中に中古品が含まれていることについては一切触れなかった。
広瀬社長は今月、中古品を認識していたか否かを尋ねる毎日新聞の取材に対し、「随分古い話ですよね。にわかには記憶はない」と答えた。【杉本修作、沢田勇】
東電は昨年夏、敷地内で移設した3基のタンクのうち1基から漏れたことについて、記者会見では「他に再利用はない」と断言し、中古品には一切触れなかった。今回の取材で「『再利用はない』の意味は、移設したものは3基しかないという趣旨」と釈明した。
これに対し、福島原発事故の政府事故調委員だった吉岡斉・九州大大学院教授(科学史)は「使い回しが問題になった時に中古品についても発表して対策を取るべきだった。最小限のことしか答えず、その場しのぎの行動しかできないのは東電の体質そのもの。全て応急策で問題に対応しているから汚染水対策も後手後手に回っている」と批判した。
毎日新聞 2014年07月23日 03時00分(最終更新 07月23日 04時39分)